たとえば6、7年くらい前のおれが今のおれを見たら、きっと笑うだろう。
過去に笑われるようなことはなにもないがね。
おれは、今のおれが好きだ。
鏡に映る自分を見る。
白髪が増えた。
歳を重ねた自分を、嫌いではない。
なかなかシブいやん。白髪ごと、ゴムで束ねる。
祖父母の遺影が職場に飾られた。
それを見て思う。
ぼくが大好きだった祖父母は、もういないんだと。
その体は燃えてしまった。
おれはなにをそうがんばってるのか。
我慢してるのか。
何年か前のおれが見たら、きっと笑うだろう。
どうせ燃える体だろ?
ありきたりの幸せなんかいらなかった。
カタにはまった幸せ。
じゃあ何が欲しかった?
大丈夫だ。
必ず、全部失う。
だってその体は、いつか燃えてしまうんだから。
だから安心して生きたらいい。
残るものも全部燃える。
一瞬の幸せを超えるものはない。
後悔は全て錯覚だ。
目をつぶって、言い聞かせるように眠る。
まるで子守唄だ。
遠く、ばあちゃんの声で歌われている。
ああ、まだ燃えてないのかな。