ユウシの作文

それでも 私は 文章をかくんだっ 自分が生きるために!!

弱音

精神を病んでいる友人を救う、というのは、非常に、非常にきついことだ。

おれにとって、2回目。
2回目の経験だ。
前にも、あった。違う友達を。救おうと。

わかってる。

魂を削るように救おうとしてはいけない。
それは、なんにもならなかったじゃないか。
何ヶ月も、いや何年も、苦しんだことが、NPOを頼って、一発で解決した。
プロの仕事で支援してもらうことの方がずっと大事だ。
友人としてまとめて全部救うなんてできない。

おれが壊れる。

わかってる。
経験済みだ。

だから、冷たく思われても。
おれはやらない。
おれの日常を変えない。
壊してまで君の元に行かない。
共倒れに、なるだけだから。

それでもつらいんだよ。

誰か助けて、なんて言いたくなるのをこらえてる。
こらえきれないつらさはどうする?

文章を書く。
文章を読む。

ほかに見つからない。あとの方法は誰かを傷つけるかもしれないからな。

本当は誰かを頼りたい。
本当は助けて欲しい。

つらいぜ。
まあ、でもなんとかなるだろ。
自分の強さを信じよう。

つらいぜ。


2011年9月19日の日記。

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「光」

今日は刈谷に行った。
約束を守りに。

ゲンジボタルの幼虫は、カワニナっていう貝しか食べない。
他のものを食えばいいのに、カワニナしか食わないから、生きていけなくなっていく。


この夏、おれは友達を助けたかった。


高校生の頃、みんなは何をしていた?
おれはあの校舎の中で、友達がほしくて、でも浮いていて、
とても不器用で、かっこわるかった。

それでもそんな中で、仲間がいた。
将来のことを不安がることもなく
現実に潰されそうになることもなく
面白いことをいっぱいやった。
バカなことをいっぱいやった。
真剣な遊びをいっぱいやった。
話をして、笑って、煙草を吸って、勝負して、歌って、
騒いで、屋上にのぼって、ケンカして、遊んでいた。

まるで魔法がかかったような時間だった。


15年。
少年はシンデレラじゃなくおっさんになった。
魔法が解けるように、みんな、「生活」の中に。

彼はすべての家族と別れた。

昨夏、きゅうに彼はひとりになって、帰る場所がなくなった。

困っていた。
助けたかった。
魔法の中にいた友達だから。
ただ当たり前に。
おれはおれの守るべきを守りながら、彼も、と。

彼には病気があり、彼は弱かった。
おれよりもずっと不器用で、繊細で、彼には、もう他の誰もいなかった。
行政も、福祉も、中途半端で制度の中に入れない彼に、なにも、なかった。


1年。
弱い彼は、病んで、戻って、を繰り返し、
それでもひとり、生きてきた。
おれにはできないかもしれない。
彼は、おれと対等だ。
おれは、支えてきた。
しかし、もう、ひょっとしてそろそろ限界なのかもしれなかった。

彼も、おれも。


この夏は、おれにとって、やはり、つらい夏だった。
「失った」夏だった。

7月、終わり、夏の日。
生活保護の書類を揃え、ダイソーで印鑑を買い、車を停めた。
そこで、終わった。
何日も前に置いておいた食料が腐臭を放っていた。
彼は、完全に姿を消していて、おれは、彼の残骸を見た。
それからの日々、なにも変わらない彼の車、残骸を、何度も何度も見るだけになった。

死んだかもしれないな。

そう思いながら、何度も。
何度も155号線を走り、何度もあの公園に。
夢の終わりを幻に見て。

 

9/16
刈谷市役所からの留守電
「お伝えしたい事があります」

以前聞いた、「なにかあったら」電話します、という響きには、「悪い方向で」というニュアンスがあったのを、よく覚えていた。
くらっ、とした。

しかしその内容は、つまり、生きていた、ということがわかった、のだ。
嬉しかったさ。それは、もちろん。
そして、今日、会いに行って、待った。
でも、会えなかった、だけ。

おれは拒否された。
「会いたくない」、という、ことだ。


おれは。

していない約束まで守ろうとする。

約束はふたりでするものさ。
おれは、勝手に、守ろうとする。
していない約束を。


おれっていうのが、わからなくなる。
おれは、なんだったのだ。

 

困っているなら
助けたかった。
おまえのためになりたかった。
おまえが笑うのを見たかった。
そしてそれはおれのクスリだ。


おれが俺のクスリを求めたのが、間違いだった、か。
人を助けるということ、
それは、自分は助からなくてもいい、という覚悟がいることなのか。

たくさんのことがあって
それらがすべて
正直に
苦しかった。
つらかった。
寂しかった。
本当に、本当に。

 

この夏はおれに語りかけた。
誰もおれを助けてはくれない。
それが当たり前だ。
その当たり前の上で、人を思え。
大切な人間を、好きな人間を。
ほんとうのやさしさを自分に求めるなら、そう思え。

やさしい人間になりたい。

なら、強くなれ。
ひとりで耐えきれ、飲みきれ、頼るな、期待するな。
なのにこうやって文章を書く。
誰かに伝えようとする、苦しみを、「どうにもならなさ」を。

おれはいったいなんなのだ。


病気に似ている。


このやさしさは
カワニナしか食わないから
本当はおれを思ってくれる人がたくさんいるのに
おれはカワニナしか食わないから
きっと


おれはやさしくなれないのかな


おれも、彼も、あなたも


いつか
やさしさが
いつか羽化して、美しく光るホタルになったら

きれいだろ。

光。

おれは燃え尽きないろうそくになりたい。
人を焼かず、自分を焼かず
いつまでも、いつまでも、その光を灯しつづけられたら

いいのにな。

 

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2012年5月7日の日記。

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「ある光」

月が明るい。
久しぶりに、刈谷総合運動公園に行ってみた。
「彼」の車はそのままで、時は止まっていて、変化はなかった。
開いた窓から雨が吹き込んだのか、車内が少し汚れていた。

生きてるのだろうか。
きっと生きてるのだろうな。

寂しがり屋は、空をよく見上げる。
アイツも同じ月を見ているだろうか。

155号線を走る。
この道を走ると、普段は考えない、ツラかったことを
たくさん
たくさん
思い出す。

去年の夏は本当にツラかったんだ。
なんの癒やしもなかった。
毎日が本当にツラかった。
こういうことを書くのは、不幸自慢みたいでイヤなんだが…
過ぎた今なら言ってもいいんじゃないかと。

ツラかったよ
本当に。

去年の9/19の日記(「光」)を読みなおしてみた。

ああ。そうなんだよ。

愛なんだ。
結局。


光。

満月の光。

照らしておくれよ
一寸先は闇でいいから

いま ここだけを。

彼だけを。

 


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2012年8月28日の日記。

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「天の川」

マスオカの実家近くを走ってる。

昔このへんをよくケッタで走ったな。

タナカくんをケツに乗せて。

廃虚になったラブホテルを探検した。

ナットくんと、授業フケてチンペイを助けに行ったな。

ナカオくんが投げた指輪は、まだ洲原池に沈んでんのかな。

まったくたのしい高校生活だった。

もし、きみがおれと同い年で、あそこにいたら、きっと友達になってた、かな。

遠くの方で、2ストのカン高い音がする。
あれは、マスオカの単車じゃないのかな。

二度と戻らない。

二度と戻らない、一回きりだった。

ただずっと過ぎていく
すべての時が一瞬

いまきみとつなぐ手も
一緒に見上げる星も

過ぎていき、戻らない。


たくさん遊ぼう。


誰になんて思われても、一瞬のきらめきを
集めるように

遊ぼう。

いつまでも、いつまでも、ずっと。

それだけを、願い続け、終わらない時間を
遊び続けよう。

いつまでも、いつまでも、過ぎていく、一瞬、
ずっと、若く、ふしだらに、願い続け、
遊ぼう、一緒に。