ユウシの作文

それでも 私は 文章をかくんだっ 自分が生きるために!!

半分で歩く

いつもの山を歩いていた。

ふと思い出した。

もう何年前だろう。10年くらい前だろうか。

仲間たちと、山中の、誰も通らぬ道なき道を歩いていて

そのうちのふたりは、仲睦まじくつきあっていた。

おれたちは、誰がやったのか、倒れていた木にナイフで相合傘を描いた。

つきあっているふたりの名前を刻んだ。

本人たちは、ただはにかむのみ。

かわいい悪戯だ。

ちょっと茶化したかっただけの。

 

あの木は、あの相合傘は、まだ刻まれたまま残っているのだろうか。

きっと、あの山のどこかで、まだ残っている気がする。

もう場所も忘れてしまった。

 

ふたりはその後、別れ、別れきれず、しかし別れ、今は別々の人と結婚した。

それぞれ、幸せそうに暮らしている。

そしてふたりは今もまだ、仲良しだ。

 

相合傘、その祈りのような、小さな夢のようなものは、叶ったのだろうか。

 

歩きながら、思った。

夢は、だいたい半分、叶う。

ずっといっしょにはいられなかった。

でも、今も仲良くいつづけている。

 

夢は、だいたい半分、叶う。

それを絶望とは思わない。

希望と抱いて、今日も山を歩く。